花緒と、日本の色
花緒の作品には、日本の美しさが息づいています。
ちりめんのやわらかな質感に触れ、手に取った瞬間にふわりと広がるのは、時代を越えて愛されてきた和の彩り。
古くから受け継がれてきた日本の伝統色は、自然の恵みや人々の願い、暮らしの中で育まれた感性によって生まれました。
それぞれの色に込められた物語を知ることで、ひとつの花器や飾りが、より深く、豊かなものとして心に残るはずです。
ここでは、花緒が大切にしている伝統色の一部をご紹介します。
褐色(かちいろ)
黒に近い、深く澄んだ藍色。
「かち=勝ち」と読まれることから、戦の勝利を願う武家に好まれ、鎧や武具に多く用いられました。
現代でもスポーツのユニフォームに取り入れられるなど、縁起の良い力強さを持つ色です。
葡萄色(えびいろ)
山葡萄の実のような、落ち着いた赤紫色。
「葡萄葛(えびかずら)」の名に由来し、平安の昔から宮廷の人々に親しまれてきた気品ある色です。
王朝文学にも登場し、源氏物語の光源氏が愛する紫の上のために選んだ色としても知られています。
常磐色(ときわいろ)
常緑樹の葉のような、深く穏やかな緑色。
「常磐」とは永遠や不変を意味し、長寿や繁栄を願う心が込められた色。
神事や祭礼に欠かせない色として、古くから大切にされてきました。
栗皮色(くりかわいろ)
栗の皮のような、落ち着いた赤褐色。
江戸時代、庶民の衣装に制限がある中でも、粋を楽しむ人々は茶系の中にさまざまな工夫を凝らしました。
「四十八茶」のひとつとして親しまれた栗皮色は、上品でさりげない華やかさを持ち、女性の帯にもよく使われた色です。
これらの色は、ただ美しいだけでなく、時代を超えて人々の心に寄り添ってきた色です。
花緒の作品にも、その色の力が静かに息づいています。
手に取った方の暮らしに、そっと馴染み、物語を添えられますように。